魔法使いと日常

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「ふーうりー!」 やっと授業が終わった。 私は、これから遊べるか尋ねようと、親友の早坂風理(ハヤサカ フウリ)を呼んだ。 「んー?どしたの、花蘭」 花蘭は私の名前。私は本宮花蘭(モトミヤ カラン)。 風理は、いつもと同じ優しい微笑みを浮かべてこちらを見ている。 私が、 「きょう、これから遊ばない?私、駅前に出来た新しい本屋さんに行ってみたいの!」 というと、風理は、 「ごめんね。今日は、おばあさまがお家に来るから遊べないの…」 といい、申し訳なさそうな顔をした。 風理の家は、由緒のある、このあたりでは誰もが知っている大きな家。 風理の言う「おばあさま」は、なんでも、凄く立ち振舞いや言動に厳しいのだという。 そのおばあさまに気に入られている風理は、毎日、茶道や花道などの沢山の事を習わされているらしい。 「そっか…じゃあ、しょうがないね」 本屋へは、一人で行こう。 私は風理に手を振り、学校を出た。 ☆ 「えーっと、文庫、文庫……っと」 家の近くの本屋なら、もう何がどこにあるか全部解るのに。そう思いながら、文庫のコーナーを探す。 「あ、あった……うわぁ」 広い。コーナーが、とてつもなく広いのだ。左右をきょろきょろ見ながら、お目当ての本を探す。すると、 「?」 不思議な本を見つけた。題名は、『異世界への扉』。 「なんだろう、これ」 もともと、ファンタジーものが好きな花蘭。その題名は、花蘭の興味をひいた。 「''精霊の小石''付き…かあ。」 悪徳商法っぽいが、花蘭はその本から目が離せない。 「買っちゃおう……かな?」 欲しかった文庫と一緒にレジへ持っていくと、レジ担当の人は、 「その本は、ここのものじゃないよ」 といい、文庫の方だけレジを済ませた。 どうしていいか解らず立ちすくす花蘭に、担当の人は、 「欲しいなら、持っていったら?ここにそんな本は登録されていないし、僕も入庫のときに見たことがないもの」 と言った。 手を離す気になれなかった花蘭は、遠慮なくそうすることにした。
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