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☆
「ただいまー」
と言い、家へあがる。返事は帰ってこない。
花蘭は、11歳の時に両親を亡くしている。忌々しい、交通事故で。
「…よし、完了!」
明日は金曜日、校外学習である。1泊2日で、山奥へ行く。泊まるのは少年自然の家のようなものだが、様々なレクリエーションがある。
花蘭は準備を終わらせ、買った文庫を読む。この時、花蘭はあの本の事をすっかり忘れていた。
☆
翌朝。リュックを背負って出ようとすると、あの本の事を思い出した。封をあけ、どうしようかと迷った花蘭。
しかし、本好きとしては昨日忘れていたのが恥ずかしい位なので、そのまま本をリュックに詰めた。
「うん。これでよしっと、行ってきます。」
いざ、山奥へ。
☆
「おはよー、花蘭」
眠そうな声で話し掛けて来たのは、風理だ。
「おはよ、風理。眠そうだね」
私も眠い。眠いが、背中のあの本が気になって仕方がない。
「うん、すっごい眠い。…あ、皆が来たよ」
皆、とは、班員のこと。私たちの班は5人で、私と風理と、
「おはよう。早坂、本宮。」
「おはよーっ」
「早いのね、2人とも」
この3人。
まず、水野珠樹(ミズノ タマキ)。
学級委員長をやっていて、周りからの信頼も厚い。噂によると、学力は学年一らしい。運動もできるから、まさに文武両道、ってやつ。
つぎに、焔太一(ホムラ タイチ)。
クラス一の元気さを持っている。容姿もまあ、かっこいい方で、何回か告白されてる場面を目撃したことがある。運動会では、100m走で水野に勝ってた。
それから、土屋世奈(ツチヤ セナ)。
私と風理の幼馴染みで、私達以上の本好き。いつも、窓際の後ろの席で本を読んでいる。髪型はストレートで、漆黒なの。皆からは、お人形さんみたい、って言われてるくらい綺麗。
「点呼始まっちゃうし、行こっか」
水野が言い、皆で集合場所へ向かう。
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