2話:母からの手紙……そして、

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【で、母ちゃん何だって?】 「そんなッ……!!」 【お、おい…どうしたんだ?!】  和んだのも束の間だった。  手紙を読み始めた天音の表情が、やにわに険しくなった。  眉間には深く皺が刻まれ、瞳は再び翳りを宿す。 【なんて、書いてあったんだ?】  気遣って問いかけた瞬間、天音の纏う気配――霊力が、まるで燃え盛る業火さながらにビリビリと夜の空気を揺らした。  まさに豹変。  いまの天音には、その形容がぴったりだった。 「ここを見て」  背中合わせで寄り添うようにしていた彗は、肩越しに乗り出して手元の手紙を覗きこむ。 【なんて書いてある?】 「母さん、やっぱり知ってたんだ……自分が死ぬって」  彗は何も言わず、ただきつく天音の頭を抱き締めた。 『天音、お前がこれを見つけた時、恐らくもう私はこの世に居まいだろう。この手紙はそのつもりで書いた。急ぎゆえ少しばかり強引だが、堪忍しておくれ。 天音、済まぬ。私の不手際でお前の存在が嗅ぎ付けられてしまった。悔しいが、もう力が足りぬ。 お前を隠してやれるほど、私も長くないようだ。なので今、お前に渡るだろうこの書簡を以て封じを解くことにする。』 【封じ、って何だ?】 「とある事情で、私には封印が掛けてあるの。今、その封印が解かれた」 【って言われてもよォ、よく分からねぇよ…】  封印がなにかという詳細には答えず、天音は再び書簡へと目線を滑らせる。 『それがまず、一つ目だ。そして二つ目。お前は母の私よりも強い、だが守る術を持っていない。だからその補いに私の式を遺していくことにした。 私の道具の中に、白木の小匣があるだろう』 「白木の小匣、これね」  手紙の指示通り、目的の物を見つけた天音は、小匣を慎重に取りだした。 「なに、入ってるんだろ?」  式と書いてあったので、恐らくは呪物の類いだろう。  匣を振ってみると、中でカタカタと硬質な音がした。 「軽いけど、なんだろこれ…」  かぱり。  小匣を開いた瞬間、匣の中身とバッチリ目が合ってしまった天音は、忽ちに石化した。 【天音?】 「彗……これ、動物の骨、よね?」  昏(くら)く、虚ろな眼窩。  白木の小匣の中には、拳より少し大きい獣の頭骨が、どこか厳かに納まっていた。
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