執事と狩人、主を守る

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「あぁっ! こんなのルール違反!」 そんな悲鳴が聞こえたのは、ある日の朝。 ギルド、アインス=リヒトで受付嬢を務めるアゲハが暇つぶしに依頼書の整理をしていたときの事だった。 狩人暮らしの頃からの習慣か、無駄に早起きで毎朝早くにギルドへやってきている茶髪の少年、ユーアはギルドを訪れると同時にその声を耳にしていた。 「どうかしたの?」 アゲハの元へ向かい、首を傾げる。いつも通り依頼の種類ごとに整頓されている紙の中に、なぜか手紙のようなものを見つけたからだ。 「依頼じゃなくて手紙を出すなんて、ルール違反。グドリは昨日いったい何を見てたのかしら!」 「知り合いと談笑してたんじゃない?」 「ありそうで困るわ」 そう言いながら、二人は薬師フェルマータと怪しげな会話を繰り広げるもう一人の受付嬢の姿を思い浮かべた。 おそらくどちらも黒い笑みを浮かべていることだろう。 あの二人がどんな会話をしていたのかを考え始める前に、アゲハはカウンターの上に置いた手紙を拾い上げた。 「ユーア君これ、捨ててきて」 そう言って、ユーアの胸元に手紙を押し付ける。 「なんで僕が……」 明らかにいやそうな顔をしつつも、渡された手紙をつい受け取ってしまう。 「渡されておいて何だけど、嫌だ」 「酒場の仕事、お給料減額」 「やらせていただきます」 「よろしい」 受けられる依頼が無いとき、アゲハが立ち上げた酒場の仕事を手伝うこともあるユーアに拒否権はないのだった。
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