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僕はここで、ものすごく重大なことを思い出した。
「じゃあ、こっちだから」
悶々と考えている間に、曲がり角まで来てしまったみたいだ。
そのまま角を曲がろうとしている篠崎さんを急いで呼び止める。
「待ってください!!」
不思議そうな顔をする彼女が振り返る。
「2年A組の山本小太郎です!!これからよろしくお願いします」
下ろした頭を元に戻すと、きょとんとした篠崎さんと目が合った。
あわてて辺りを見渡すと、通行人まで不思議そうな顔をしてこっちを見ている。
僕はここでやっと、自分の行動があまりにも唐突すぎたことに気づいた。
「…自己紹介がまだだったので、その…いきなりすいません」
深々と頭を下げると、クスッと小さな笑い声が聞こえた気がした。
恐る恐る顔をあげると、そこにはマスク越しに小さく微笑む篠崎さんがいて。
優しげに目尻をさげる表情に、胸の鼓動が速くなる。
やっぱり僕は、この人が好きだ。
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