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元は普通に図書室として使われていたみたいだけど、老朽化と本を置くスペースがなくなったとかで、少し前に新しく建て替えられた。
だからここにあるのは、古びた本と教材だけ。
なら図書当番なんていらないんじゃないかって思うかもしれない。
でも、先生たちが教材を取りにくるから毎日鍵を開けなければならないんだ。
図書室の頃の名残で、カウンターの右端に縦長のテーブルが置いてある。
テーブルの前から2番目。
そこは僕が思いをよせる、篠崎水琴さんの特等席だ。
小さな背中いっぱいに広がる長いストレートの黒髪と、そこから覗く肌は、透けるように白い。
触れたら壊れてしまうんじゃないかと思うくらい華奢な身体は、彼女をさらに儚くみせた。
大きな黒い瞳は、まっすぐに本へと向けられている。
僕はその美しさに、息を吸うことも忘れてしまうんだ。
カウンターから彼女までの距離は、たったの3メートル。
一歩踏み出せば届く距離。
臆病な僕にとって、そこはいつでも近くて遠い。
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