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喜んでいいのか悲しんだほうがいいのかよくわからない僕は、とりあえず首を縦に振ってみた。
彼女は僕から目線を外すと、時計を指差す。
「もう閉館時間じゃない?」
針は5時をさしている。
僕は慌てて図書室の掃除を始めた。
掃除といっても、軽く床を掃くだけなんだけどね。
一通り掃除を終えて廊下に出ると、いつものようにマスクを着けて本を読んでいる篠崎さんがいた。
僕は驚きながらも小走りで近づく。
もちろん1メートルの距離を保って。
「もしかして終わるまで待っててくれたんですか?」
ゆっくりと本から目線をずらして、首を傾げる。
「…だって彼女は彼氏と、一緒に帰るもの、なんでしょ?」
その言葉を聞き終えたときには、ハンマーで打たれたような衝撃が僕の頭の中を走った。
篠崎さんの口から“彼氏”という2文字が出てきただけでも気を失ってしまいそうなのに。
それに加えて、口元を本で隠しながら潤んだ瞳で見つめてこられたら、言葉を返す間もなく一発でノックアウトされてしまった。
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