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王都の中ではあるが、前王の考えで、都の中には自然も取り入れるべきだと。ここ、クラウジアには精巧な石造りの建物が数多く並ぶ中、都の端を主に森や林がちらほらと残っていた。
緑や川はあるが、魔物などはいない。いるのは小さな生物だけ。子供の遊び場としても大変人気があった。
あの人は、そんな風景を見るのが好きで、この森の中に家を建てた。
そう、森中にある木造の家窓から、女性の顔が覗いていた。
女性はベッドに座ったまま読みかけの本を両手に、窓から森で遊ぶ子供達をずっと眺め続けていた。
質素な部屋だった。白いベットの横には花が飾ってあり、あとは本棚だけ。
彼女は病気だった。一日中其処にいる。お金さえあれば治せる病気だが、ベットに一日中座る彼女にお金を稼ぐ力もなく、夫もいなかった。
いるのは、自分にとってたった一つの宝。頑張って今の生活を支えている1人息子だった。
しかし、その子はいずれ一人になる。将来子供とは誰しもそうなるものだが、あの子は辛い形で、そして普通の子供よりも早くそうなってしまう。
はぁ、と溜息をこぼしながら、先程のように昔の思い出を一つ一つ思い返す。
それは何百回もした事だけれど、もういずれそれも出来なくなる。
自分に何がしてあげられるだろうか?
何を残してあげられるだろうかーー?
彼女は、森で遊ぶ子供達を見て、ただじっと考えていた。
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