3人が本棚に入れています
本棚に追加
クラウジアは王都であるが故、七歳から十四歳まで、世の歴史や基礎知識を学ぶ場所が数点存在する。別に行くか行かないかは自由だが、殆どの親が自分の子供をそこへ行かせようとする。
何故かと言えば、十分に基礎知識を学び十四歳になった暁には、将来を有望視された者だけが入れる王都の特別特区、そこに在る……ある学園に入れる。
一流の魔法と剣を学べる場所であり、卒業した者には将来王国に仕える事が許される証が与えられる。
誰にでもチャンスがある、素晴らしい制度だ。という平民の声が上げられた中……勿論例外はいた。
僅か十歳で学びを打ち切り、それからというもの、学びの場所にも通えず毎日を仕事で費やす一人の少年。名はオルカと言う。
オルカの仕事はまぁまぁ大きな酒場だった。
注文を聞いたり、料理したり、酒臭い野郎共の愚痴を聞いたり……ではない。
そういう役目は商売繁盛の為、必ず女性に当てられる。
なら何か?
見せ物である。
ファイト、喧嘩をするだけの。
ただし、剣で大人相手に。
彼はまだ子供で、そして親繋がりなコネがある訳でもなかった。世間は厳しく、優しい人にも出会えなかった。
普通には働けなかった。
王都の中だと言うのに……始めはオルカもそう思ったが、いや、これが普通なんだと。
お金を稼ぐ厳しさを知った。
元々オルカの仕事は、酒場に来る者同士の試し場や遊び場だったのだが、ある理由で格下げされた。格下げされたある理由というのは、酒が入った男というのは全く歯止めが効かなく、またイザコザで店も損害を被り兼ねないから、である。
格下げされた後、戦い相手は店側で用意される事になった。しかし、野郎共の荒さに辞める者が絶えなく、今ではオルカ一人になってしまったのである。
同じ境遇で働く人間もいなく少し寂しい感じもあったが、オルカとしてはラッキーだった。
マスターが人たりない分余分にお金を弾んでくれる。
ただ、それでも本当に、始めた当初は毎日毎日神経が擦り減る大変さだった。
酔っ払いや、戦場に向かう傭兵の相手をする。時には賭け対象に。
そして、それだけではお金は貰えない。
商売である。
戦う相手と上手く拮抗したり、そして最終的には負けなければならなかった。
気持ちよく帰って貰う為に。
最初のコメントを投稿しよう!