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聖奈は取り敢えず、ポケットからハンカチを取り出した。 「顔拭いてもいい? 血と汗が凄いから……」 「そんな事しなくてもいい……」 そう言って立ち上がって歩こうとするが、まだ踏ん張りが効かず崩れてしまった。 「くそっ!」 悪態をつき、地面を叩く。 聖奈はフィナーレの言葉を無視して顔を拭き始めた。 「何も言わないで。 どうせまだ歩けないんでしょ? これくらいいいじゃない。」 驚いた事に目をそらしてはいるものの、フィナーレは聖奈を受け入れた。 「お前、この事については何も聞かないんだな……普通気になるだろ。」 「そりゃ気になるけど……」 その時、ずっと黙っていた風雷からテレパシーが来た。 (聖奈! あなた何やってるのよ!! こいつの気が変わらないうちに逃げなさい!) (この人が悪い人には見えない。 本気で私を殺したかったら、殺す事なんて簡単だっただろうし、今だって殺そうと思えば殺せる。 きっと何か理由があるんだよ。 本当は良い人なんだよ。) (勝手にしなさい。 私は知らないわよ。) 「よし、綺麗になったよ。 翼は血だらけだけど……」 聖奈がそう言うと、フィナーレは突然手を伸ばし、聖奈の傷口に当てた。 聖奈は一瞬殺されるのかと思ったが、すぐに違う事に気づいた。 みるみるうちに聖奈の傷が治っていく。 そして、傷はまるで無かったかのように消えてしまった。
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