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聖奈はいつもよりも1時間早く起きた。
今日は私の16歳の誕生日。
月神家では代々女の子が16歳になる時にはある特別なものをあげなければならないという言い伝えがある。
実は、聖奈は月神家初の女の子。
そのため、この言い伝えが行われるのは聖奈が初めてになる。
「何をもらえるのかな♪」
父に言われた通りに、いつもより1時間早く起きて家の庭にある、大きな桜の木の下に行ってみた。
2月の桜の木は葉も花もなくて、なんだかさみしい。
幼い頃、よくこの木の下で父といろんな話をしたっけ。
桜の木の下に着くと、木の後ろから父が現れた。
「聖奈。
今日は聖奈の16歳の誕生日だね。
幼い頃から話してあげた言い伝えでは、月神家の家宝であるこの指輪をあげることになっている。
けれど、この指輪を受け取るということは運命を受け取るということ。
聖奈にはその覚悟があるかな?」
父はスーツ姿でそう言った。
「運命?
その指輪をもらったら何があるの?」
父は悲しそうにこう言った。
「二度と俺たちに会えなくなるかもしれない……」
「えっ。」
2人の間に冷たい風が流れる。
「それってどういう……」
「たとえ聖奈が指輪を受け取りたくなくても、聖奈が16歳になった今、指輪は自動的に聖奈のものとなる。
詳しい事は俺にも分からない。
これからの事は指輪が導いてくれるだろう。」
父はそう言うと、聖奈の手の中にそっと指輪を入れた。
「健闘を祈るよ、聖奈……」
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