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(ベスティアよ、俺を忘れていないだろうな?)
聖奈の心に何者かが問いかける。
(忘れてないよ。
蒼氷が声をかけてくるのを待ってたから。)
ビアンカの背に揺られながら、聖奈は蒼氷とテレパシーした。
その事に誰も気づいていない。
「裏屋の2人に追いつかれると困るので、走りますね♪
聖奈さんはしっかりとビアンカにつかまっていてください。
レンさんは遅れをとったら置いて行きますので、しっかりとついて来てくださいね♪」
そう言うと、フィーネは突然走りだした。
ビアンカはフィーネの横を走る。
レンは体力には自信があったが、全速力でついて行くのがやっとだった。
フィーネは5分ほど走った後、急に立ち止まった。
フィーネとビアンカは全く息を切らしていないが、レンはこれ以上走られたらスタミナ切れで置いて行かれるところだった。
「さて、あの2人を水龍から解放してあげないとですね♪」
少しの間フィーネが集中する。
「これで大丈夫です♪」
そして、フィーネが再び走り始めようとしたその時!
フラッ……
フィーネの体がフラついた。
すぐに持ち直したが、フィーネは走ることはせず、歩き始めた。
その様子に聖奈とレンは気づいたが、2人とも何も言わずにフィーネの後に続いた。
(あれが噂のフィーネか。
イニーツィオの娘ということは、姪っ子になるのだな。)
(そうだね。
あんまり実感は湧かないけど。)
(ベスティアの記憶はかなり取り戻しているようだな。
イニーツィオに会っても、ベスティアの記憶が無ければ話にならん。)
また、フィーネが急に立ち止まった。
フィーネがまるで何かに集中するように目をつぶる。
そして……
「お久しぶりですね、お兄様♪
それと、ネロ♪」
何もない真っ暗闇に包まれた森の奥に向かってフィーネはそう言った。
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