イニーツィオとベスティア

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「さて、ようやく二人きりになれましたね。」 ディナーテーブルに座るなり、イニーツィオは言った。 2人がいるのは森の中の開けた空間。 そこに、豪華なディナーテーブルが置かれている。 イニーツィオの命令によって周辺には植物以外立ち入り禁止になっているため、動物はもちろんの事、虫一匹近づいては来ない。 「さあ、遠慮しないで食べなさい。 久しぶりの姉妹揃っての夕食ですからね。」 イニーツィオは慣れた手つきでディナーテーブルの料理を食べていく。 「じゃあ、遠慮なく頂こうかな。」 聖奈もフォークとナイフを手に取り、料理を食べる。 「イニーツィオ。 私が眠っていた間、何が起きたの?」 「私の3人の息子は知っていますね。」 聖奈はベスティアの記憶を遡ってみた。 確か、イニーツィオには半神であるフィーネとフィナーレより何十億年も前に3人の神を生み出している。 「空神(くうしん)海神(かいじん)地神(ちしん)。」 聖奈はボソッと言った。 「そうです。 今、その3人が下剋上をしようとしているのです。 今までは私一人でもなんとか抑えられていたのですが……」 「抑えられなくなったって事? それでフィーネとフィナーレを生み出したのね。」 「その通りです。 半神にしたのは、神だとあの3人のような事になりかねないと思ったからです。 半神であれば、私がいつでもあの子達を消すことが出来ますから。」 イニーツィオは食事の手を止めた。 「あの子達は私の想像以上に素晴らしい働きをしてくれています。 ですが、あの子達だけではあの3人を止めるには弱すぎます。 妹であるあなたの力がどうしても必要なのです。」 イニーツィオは落ち着いているように見えたが、その言葉には必死さがあった。 妹として、イニーツィオを助けてあげたい。 けど…… 正直、記憶がかなり欠落しているような気がする。 何か、何か大切な事を忘れているような…… 「今の私で良ければ、力になるよ。」
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