序章

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立ち込める黒煙。響く悲鳴。地獄と化した、神の国。 王宮は家臣も皆死に絶え、残ったのは宮廷最高魔導師であったロマティエとその娘イリノス、部下のザキルだけであった。 しかし、二人も火の手によって追い詰められ逃げ道を絶たれていたのである。 「師匠、神の怒りは生贄により沈められると言います。」 「しかし、何を捧げると言うの?」 確かにその場には何も無く捧げられる物などなかった。 「あるではないですか、あなたのすぐ横に。」 そしてザキルは徐に娘イリノスの腕を掴むと火の海の中へと放り投げたのだ。これにロマティエが正気でいられる訳がなかったが、非情にも火の手が割れたのである。 後にこの出来事は「神の災い」として、語り継がれる事となる。
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