噂のカレ

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─── 「こーこーろー」 木曜日、朝。 テストが近づいてきたあああって現実逃避したくなってくる頃だ。 「なにー、奈々美?」 ドアの向こうからひょこっと顔を覗かせるのは、橋田奈々美。 綺麗な黒髪を揺らして笑う彼女は小学生のとき同級生で、ずっと同じ学校。 今は隣のクラスだけど、凄く仲がいい。 「科学の教科書貸してー!」 「持ってこいよおおお」 「忘れちゃったっ☆ おき勉してたはずなんだけどな☆」 「うわあ‥‥、だから下の方なんだよ、成績」 「わかってるもう言わないで悲しくなる」 わかってるんかい。 「はいはい、悲しくなるならちゃんと勉強しよーね?」 「‥‥はぁい」 ムスッとほっぺたを膨らませた。 「あ!そういえばさー」 今度はいきなり顔をパァッと輝かせた。 「噂なんだけど、優樹と付き合ってるってほんと?」 「優樹?」 「谷村優樹」 「あー、ゆっきーね。 ゆっきーは塾が同じだけだよ?」 「だよね」 「なんで? それがどうかしたの?」 「いや、だから、こころと優樹が付き合ってるって噂がながれてるから、そうなのかなって思って」 そんな噂ながれてるんだ。 全然知らなかったんですけど。 「ゆっきーは友達だよー!2人でいろんなとこ遊びにいったりはするけどねー!」 「(‥‥それが噂になるんじゃないの‥‥)」 「‥‥?」 呆れ顔であたしを見る奈々美。 「ま、頑張って! 教科書ありがと!」 ‥‥なんか応援された。
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