2年5組

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「やめんか」 「えー、いいじゃん。 これこころ」 「え?」 トントン、と教科書を叩いた。 わ‥‥指、長いなぁ。 手とか大きいし。やっぱり男女で差が出ちゃうんだ。 そう思いながら自分の手に、目線を落とした。 「こころ? 見てる?」 「へっ、‥‥あぁ、見てる見て‥‥る‥‥‥‥」 そこに描かれていたのは、‥‥何これ? 辛うじて女の子とわかるレベルの、お世辞じゃなくても上手いとは言えない絵。 つまり下手で。 「可愛くね?」 「バカにしてる?」 「なんで?」 「これ何?」 「こころって言ったじゃん」 「え、ブサイク」 「ヒド! こころにぴったりじゃん」 「うるさい。どーせあたしはブサイクですぅー」 あっかんべをして前を向いた。 前では黒板に向かって先生が一生懸命、公式の解説をしてる。 でも誰も真面目に聞いてない。 だって数学だし。翔輝みたいに、寝てるやつがどこかにいるかもしれない。 頬杖をついて、ぼーっと窓の外を眺めていたら。 くんっ、と髪の毛を引っ張られたような感覚。 「‥‥‥‥‥‥」 振り向いてみると、‥‥翔輝があたしを見つめていた。 「な、何」 ちょっとドキッとしながら聞いてみる。 「こころ‥‥‥‥」 「何?」 「‥‥んー‥‥‥‥‥‥‥‥」 「‥‥‥‥‥‥?」 あたしの髪の毛をきゅっと掴んだまま、目を閉じた。 え‥‥これ、寝た? 「しょ、翔輝」 「‥‥‥‥‥‥ん」 「‥‥完全に寝た」 えぇぇぇえ。 髪の毛から手を離してくださいー。
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