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えりちゃんとふたりで、上履きに履きかえる。
かかと部分をつぶして履いているえりちゃんの上履きは、歩くたびにパタパタと特徴的な音がする。
「わっ、一葉、見て見てあれ。すっごい金髪」
えりちゃんが誰かを見つけたらしく、あたしの肩を叩いて前方を小さく指差す。
なんのことを言ってるんだろうと、人差し指の指す先を見ると、前方10メートルほど先に、金髪の男子の後ろ姿が見えた。
「――!」
驚いて、とっさに下を向く。
後ろ姿だけど、春休み前と色が違うけど、あたしには分かる。
あの人は、……“先輩”。
同じ高校に入学して、1年間。
上手い具合に避けてきた。
あと、今年1年だけ。そしたら、先輩は卒業するから。
それまで見なければいい。
そう思っていたのに……。
いきなり見つけてしまった。
うつむいて、特にコメントもなく黙ったから、その様子に気付いたえりちゃんが、
「一葉ってさぁ、やっぱり男子苦手なの?」
心配そうにあたしの顔を覗き込む。
「亮佑ごときにも怖がってるみたいだったから、気になってたんだけど」
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