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職員室を出て、あたしは早歩きで進む。
「一葉ぁ、なぁ、ひーとーはー」
後ろから、優雅にゆっくりと歩く足音が聞こえる。
「おい、なにシカトしてんだよ」
胸が、緊張と動揺でドキドキと速く打ち鳴る。
2階に続く、階段を上がり始める。
やっぱり先輩は後ろをついてくる。
「おい、一葉」
どう考えても、さっきから呼んでいるのはあたしの名前。
「お前、見てただろ」
「!」
核心をつかれ、思わず階段の真ん中で立ち止まった。
「……見てたよな?」
速く鳴り続ける胸の音を感じながら、振り返る。
きっと、あたしの顔は真っ青。
どうして、弱みを握られたはずの人物のほうが、こんな顔をしているの?
「やっとこっち見たな。……一葉」
余裕そうな、含み笑い。
「どっか、違うとこで話そっか?」
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