17153人が本棚に入れています
本棚に追加
びっくりした。
先生とのキスを見たばかりだったから、何かされるかと身構えてしまった。
「なに?」
「な、なんでもないです……」
目を細めて、不審そうな顔をする先輩に、目をそらしてごまかす。
男の人が苦手になったなんて、特に先輩には知られたくない。
鍵はもうかけ終わったはずなのに、先輩との距離は1センチほどしか変わらない。
離れたいけど、先輩とドアに挟まれているから、それができない。
心臓の音が、速く、大きくなっていく。
「あの……、離れてくれませんか……」
あたしの気持ちなんてなにも知らない先輩が、あたしの背中の真ん中まである髪の毛を一束すくう。
「髪、伸びたな」
先輩の記憶のなかには、肩につくくらいの髪型しかないのだろう。
「切って……ないですから」
あの日から、ずっと。
伸ばしてる。
最初のコメントを投稿しよう!