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あたしが触れたことのないそこは、どんな感触なんだろう。
水谷先生は、知っている。
先輩以外に、ちゃんと相手がいるのに……。
「水谷先生って、結婚してる……」
自分で言っておいて、ハッとする。
あのシーンを見ていたことを、自らバラしてしまった。
「やっぱり、見てたんじゃん」
先輩のすました顔。口角が、にやりと上がる。
弱みを握られているのは、先輩のはずなのに。
どうして、あたしが脅されているような錯覚に陥ってしまうの。
髪の毛を引いていた先輩の手がするっと解かれ、代わりにと言うように、後頭部に手の平が移動する。
大きな手にやわらかく引き寄せられ、あたしは抵抗した。
「や……、やめてください……」
情けない。声が小刻みに震える。
……怖い。
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