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「さわんないで……ください」
頭の後ろに触れる手の力が、強くなる。
あたしはうつむいて、唇を噛む。
顔が熱い。
「お願い……、先輩」
あんな別れ方をしたのに、先輩は何事もなかったかのように、臆することなくあたしに近づく。
気にしていたのは、あたしだけ。
3年も経つのに引きずって、先輩を見かけるたびに目を伏せて、
暖かな、あの日と近い陽当たりを感じるごとに思い出して……。
あたしのトラウマは、先輩にとっては思い出ですらなかったのかもしれない。
涙がこぼれそう。
「お前ってさ」
強い力がふっと弱まって、あたしの頭を優しく撫でる。
「……男、苦手?」
核心を突かれ、心臓がギュッと縮まった気がした。
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