「好きだった」

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多目的教室から2年生の教室に戻る頃には、チャイムが鳴る寸前だった。 結局、生物の先生に遅刻届けを渡しに行けなかったし。 疲れた……。 ため息をつき、教室に入ろうとしたら、 「生物室に、ペン全部丸ごと忘れてきた!取ってくる!」 「――っ!」 「うっわ!?」 反対に、教室から勢い良く出てきた男子と、正面衝突してしまった。 一方的な勢いと、体の大きさの違いで、あたしだけしりもちをついて転んでしまう。 痛い……。 思いながらも、スカートを急いで整えることを、何よりも優先する。 見えてないかな。見えてないよね? 不安になりながらも、見上げると、 「ごめん!見てなくて。えーと……、あ、そうだ、高森。大丈夫?」 その男子は、あたしの名前を間違えながら、手を差し出した。 去年は違うクラスだったから、名前間違いは何も気にしていない。 それよりも、手……。
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