「好きだった」

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「着いたよ」 先輩が、道路脇にある一軒家を指差す。 いつのまにか、先輩と、自分の家まで歩いてきていたらしい。 「あたしの家、覚えてたんですか……」 中学の時、確かに一緒に帰った日はあったけれど。 そんな日は、1ヶ月もあっただろうか? 先輩は、フッと笑い、 「忘れるわけないだろ」 ひらりと一度手を振って、元来た道を引き返し、あたしの横を擦り抜けていった。 そうだ、先輩の家は、あたしの家よりも学校に近いんだった。 そんなこと、あたしは忘れてたのに。 やっぱり先輩は、わけがわからない。 「あっ、せ、先輩!お金――」 「おごり」 「でも」 「じゃあな」 「あっ……」 また、お礼を言いそびれたと後悔した頃には、もう先輩の背中は見えなくなっていた。
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