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悲しみにくれる帝の上にも、月日は等しく流れる。
久々に逢った帝は、俺の顔を見て、なにか不吉なものを感じたのだという。「神をも魅入られる美貌」という言葉があるが、それが真実そのままとなり、俺が召されでもしたら…そう考えたのかもしれない。
それから、帝は、俺のことを今までよりももっと、可愛がるようになった。
俺が四歳となった春、一の皇子が次の帝、つまり春宮(とうぐう)となることが決まった。
俺では無理だった。
そのことが、祖母の生きる希望を奪ってしまったのかもしれない。
なにかにつけて「娘のところへ行きたい」などと言うようになり、二年後にはその言葉が叶ってしまう。
そして肉親を失った俺は、たったひとり、みんなとは違う育ち方をする。
華やかで暗い宮中で、俺はたったひとり、長くも短い少年期を過ごすことになってしまうのだった。
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