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祖父はゆっくりと立ち上がり、龍の肩に手を置いた。
「今から外史の世界へ向かうんじゃろ?ならば準備を怠るな」
「……ちょっと待ってくれ、なんでその事を知ってるんだ」
龍はそのままの姿勢でじっと睨むように見つめる。だが祖父はそれに怖じけず龍を優しい眼差しで話し出した。
「ワシは昔じゃが一度だけ外史の世界へ飛ばされたことがある」
「な……んだって?」
龍は突然の発言に驚いて戸惑いを隠せなかった。しかしおろおろしている龍を気にせずに話続ける。
「ワシは最初は何故飛ばされたかはわからなかった。じゃが今ならわかる……『外史の世界に異変』があるからワシは飛ばされたんだとな」
「外史の世界に……異変?」
「そうじゃ。そこを無くさないと未来は変わってしまう」
あの占い師と同じようなことを言っている。
ただ違うことは占い師は外史の世界に異変があるとは言わなかったこと。何故占い師はその事を言わなかったのか。俺の運命を視ただけでその事がわからなかったのか。そんな考えが頭の中で巡りに巡ったが、答えが見つからず楽しみが一気に不安が襲いかかる。
「じーちゃん……俺は……」
「言わんでいい」
祖父は龍の口を手で押さえる。
「戦に生死はつきもの。他方が死に、他方が生きる。それが戦の摂理じゃ。そして自分の力を信じろ」
「……わかった」
龍は縦にしっかり頷いた。祖父はにっこり笑って何かを渡してくれた。
鉄で作ってくれた手甲と足甲だった。手首や足首がしっかり動くようにされている。
「それと……ほれ」
祖父がさっきまで研いでいた方天画戟を渡してくれた。長さはもう二メートル近くあり、その三分の一ぐらいの大きな刃が輝く。
「てかよくこんなの作れたね」
「それはワシの技術力じゃ。他のやつらじゃ作れんよ」
カッカッカッと笑う祖父につられて龍も笑ってしまう。
「じゃあ家に帰るよ。父さんの仕事手伝ってよ」
「あぁ、わかっとるわい」
龍は祖父を置いて部屋を出ていく。また鉄工所に入って方天画戟を包めるような風呂敷包みを適当に集め、方天画戟を隠して家の方向へ歩き出す。
「じーちゃん……ありがとな。ただ……」
風呂敷包みで隠された方天画戟を見つめる。
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