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「アンタか?龍の子って言うんわ?」
「りゅ、龍の子ぉ?」
龍はあっけにとられ、すっとんきょうな声が出てしまった。しかもその少女は関西弁の話し方だと思ったが気にしないことにした。
「せや。管櫓(かんろ)っていう占い師から『紅き星、昼に流れて人がいたり。その人、呂布に並ぶ武人なり』って言うから来たんや」
「呂布に並ぶ武人……ねぇ。あ、俺は神矢って言うんだ。君は?」
「ウチは張遼や。字は文遠」
「え?張遼?本気で?」
「嘘言うてどないすんねん」
「わ、悪い悪い」
張遼と言えば三國志で有名な槍の名手だ。最初は董卓に仕えていたが後々に魏の曹操に仕えたという正史での歴史だが……。
「張遼は今、どこに仕えてるんだ?」
「……もしかしてアンタ、間諜ちゃうやろうな?」
張遼はすかさず青龍へんげつ刀で龍の首を軽く突く。しかし龍はそれを物怖じせずに微笑みながら自然体で話す。
「おいおい、こんな目立つ間諜がいるかよ。第一、俺が間諜だったとしても陣営知らないからその武将に聞くのもおかしいやろ?」
「そりゃ……そやな」
張遼はへんげつ刀を下ろして向こうも自然体で構えてくれる。
「敵がこっちの陣営知らんってのもおかしいな話やしな。すまんな」
「いや誤解が解けただけでもいいよ。殺されることはないし」
「ははは、そりゃそうやな。それはええとしてやな―――」
張遼は真剣な顔でゆっくりとへんげつ刀を構えた。
「呂布の武に勝る武をこの目で確かめたいわ」
「呂布の武に勝る自負はしてませんがね……じゃあこの勝負、何か条件つけて」
「条件?」
「そ。俺が負けたら……そっちに任せるわ。もし勝ったら言うこと聞いてな」
龍は言いながらゆっくりと神戟を拾う。拾った後も自然体のままだ。
「自負はないとか言いながら条件つけるぐらい余裕やんか」
「確かに呂布の武に勝る自負は否定したけど、武に自信が無いわけじゃないし」
龍は神戟を使って準備体操して身体をほぐしていく。張遼も「アハハ、せやな」と言って笑っている。
「準備できたかー?」
「大丈夫だ、問題ない」
「ほな、いくでぇ!」
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