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張遼が開始の合図とともに懐に踏み込んで槍を振り上げる。龍も素早く防御して反撃に移る。
「うらぁぁあ!」
斬る。突く。叩く。斬る。叩く。斬る―――
龍の速い連撃に対し、防御をするだけで手一杯だった。不規則な攻撃だが……いや、不規則な攻撃だからこそ予測が出来ないのだ。
「な、なんちゅう速さと重さや……?!防御するだけで精一杯や……けどここで廃れる張遼やないで!」
「おわっ!?」
張遼は龍の攻撃を弾き返した時、龍の体勢が崩れ、バランスが無くなった。
「もらった!どりゃぁぁぁあ!」
張遼が槍を振り下ろす瞬間、龍は体勢を最小限に立て直して神戟を捨てて素手で流水のように受け流した。
「なっ……?!」
「まだまだ」
受け流された張遼の槍は地面に刺さり、もうその時には張遼のこめかみすれすれに龍の脚があった。
「俺の勝ちやな。本当の戦なら顔は吹っ飛んでる」
「ほんまやなぁ……あ~あ、負けてもうた」
張遼はぺたっと地面に座った。龍は鞄の中から水筒を取りだし、コップにお茶を淹れる。
「ほい。まだあるからたくさん飲んでいいよ」
「あ、おおきに。……ぷはー、動いたあとにええな。これが酒やったらもっとええんやけどな」
「帰ったらあるやろ」
飲んでにこっと笑う張遼とそれに答える龍。さっきまで勝負してたとは思えないぐらいゆったりしている。
「しっかしアンタ、強いな~。龍の國って強いやつばっかりなん?」
「んや、ここまで強いやつはおらんよ……と自負する」
「アハハ、せやろな。てかそれなんや?見たところ水筒みたいやけど」
「みたいじゃなくてそうなんだよ。たぶん皆が持ってる物より優れもの」
龍も水筒に入ったお茶を飲む。だが張遼にあげたお茶の分があったのか、水筒にほぼお茶がなかった。張遼が一口飲むと思い出したように言う。
「そういや、神矢。なんか条件のんでくれって言わんかったっけ?」
「……あーそだそだ。董卓軍にいれてくんなましい」
「なんやそんなんかいな。まぁ月……じゃなかった、董卓に聞いてみんとわからんけど言ったるわ」
「あんがとさん」
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