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龍は笑いながら張遼に手を差し出した。張遼もにこっと笑い、手をとって立ち上がった。
「ほな、改めて自己紹介するわ。名は張遼。字は文遠。真名は霞や」
「真名……ってなんだ?」
「真名ってのは……あー……まぁとりあえず汚れがなくて大切な名前や。親しい人とか大切な人に預けることでその人のことは信頼しとるっちゅうこと。もし知らんやつに真名で言ったら殺されるわ」
「そうか……うん、注意しとく」
龍は霞に信頼されたのがうれしく思うが、その真名のことを先に聞いててよかったと思う安心感が強すぎてうれしさはすぐにふきとんだ。
一瞬、霞は嘘を言ってるのかと疑ったが真剣な目で注意していたので龍は信じた。
「そういやアンタの真名は?」
「真名?…………真名なぁ……」
龍は真名を答えるのに歯切れが悪くなった。何故かと聞かれれば簡単だ。
(俺の名前で真名はどこになる?……やっぱり下の名か……)
「……たぶん真名は龍」
「えー、たぶんってなんやねんな」
「仕方ないだろ、俺の国では真名っていうもんがない。んで真名に該当しそうなんが下の名で龍」
「ふぅん。まぁええわ、よろしくな龍」
「あぁ頼むわ、張……霞」
「張遼いいかけたな?」
「すまん」
霞は咎めるような口調だが顔が笑っているので全然その気はないだろう。
そのあと霞は馬を引き連れてまたがった。
「ほな、いくで。龍も乗り」
「いや俺は走るよ」
「はぁ?!こっから五里はあるで!?」
「五里……こっちで言うたら二十キロぐらいか。うん、問題ない」
「ホンマやろな……色々と心配になってきたわ……」
走ると言った龍に驚きと心配が重なったからか、霞は冷や汗みたいなものを額に流している。
「心配いらん。道なりを教えてくれたら絶対一刻に経つ前には着く」
「……わかった。でも虎牢関までしか教えんし、ついてなかったら許さへんで」
「了解でありんす」
そのあと、霞に虎牢関までの道なりを教えてもらい、そこから二人で行くことにした。
まぁ誰でも走っていくことなんて絶対しないだろう。
「ほな、先にいくで」
「はいよー」
……………………………
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