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「お待たせ」
龍が着いた時、まだ霞は馬にまたがったままの状態で待っていた。
「遅い!いつまで待たせてんねん!」
「無茶言うなよ!人間と馬の速さが違う!」
霞は言い方こそキツいが別に怒ってはいない。逆に気になったのが龍の汗や荒い息づかいが全くないことだった。
いくら若い兵でもあんな距離を走らせれば絶対音をあげてしまうだろう。
「まぁそれはそれとして……龍ってかなり体力はあるんやな」
「まぁ……な。別に気にしたことじゃなかったけど」
その話題をはぐらかすように龍は顔を反らした。
虎牢関を抜けると城っぽいのが見えてきた。周りには立派な城壁もある。
「あそこか?」
「せや。洛陽ちゅうんやで。覚えときや」
「んー」
門の前まで行くと二人の兵士が張遼に敬礼をした。
「張遼様、お疲れ様です。そちらの方は?」
「龍の子と言われた人や」
「龍の子……ですか」
兵は龍を疑いの目で見つめる。それを龍はにっこり笑い、足元にあった手のひらサイズの石を拾い上げて兵の目の前に突きつける。
「一戦したいならしてやるが?」
と言って龍は拾い上げた石を握力で粉砕した。兵もそれを間近に見て恐怖心が出てきたのか唾を飲んだ。
「いえ……結構です……」
「あそ。じゃあわざわざ喧嘩吹っ掛けるようなこと言ってくんじゃねぇよ……霞、行こうや」
パッと霞の方を見ると霞も驚いていた。
「なんで霞も驚くんだ?片手で石を砕く奴ぐらいいるだろ?」
「おらんわ!武器を振り回した時に石が砕ける時はあっても握って砕く人は初めてやわ」
「ありゃ?そうなん?」
龍は首を傾げる。
確かに現代でも石を片手で握って粉砕したのは俺だけだった。まぁ三國の世界でも潰せる奴はいるだろうと思ってたのだが……。
「まぁええわ。そのぐらいの力があれば絶対戦力になるし」
「どーも」
霞が褒めると龍はドヤ顔で返した。そのあとそのドヤ顔に霞はムカつき、一発殴られたのは言うまでもない。
関を通り過ぎると目の前には活気溢れる城下町。城に向かいながら歩くと商店や飲食店等、多数広がっていた。
「へぇー……。なんでも揃ってんな」
「そら揃ってなあかんやろ。まぁまだまだ寂しい商店もあるし、全体が活気づかなあかん。まぁ担当ちゃうんやけどな」
「いいんじゃない?言うのはタダさ」
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