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龍は何をしようかと考えてると、ふと思い付いたのが祖父達が働いている鉄工所だった。
「そうだ、父さんとこに行こう」
龍は祖父達の鉄工所に向かって歩き出した。
歩いてくと、周りは公園で遊ぶ子供たちや龍治のような学生が駄菓子屋に寄ったり、ゲームセンターに行ったり、老夫婦が仲良く散歩したりしていた。
「なんやかんやいつも通りの風景だな。ここは」
そんな風景を見回しながら歩くと道路端に『占』という小さな立て看板が机に置かれている見慣れない店を発見した。そこに白髪のおっさんが座って客を待っている様子だった。
「あんなとこに占いの店なんかあったか?……まぁいいや、鉄工所の時間が終わるまで時間があるし占ってもらお」
龍治は早足でお店に行き、ササッとイスに腰を掛けた。
「じーさん、占いやってんの?」
「そうじゃよ」
「じゃあ占ってくれよ。いくら?」
龍治が鞄から財布を取り出そうとしたとき、老人が手で制止をかけた。
「いいよいいよ。あんたが初めてのお客さんだからタダにしよう」
「マジで!?ありがとうよ、じーさん!……で、なんの占いしてくれるんだ?手相?タロット?」
「いいや、ワシは人の運命を視て伝えるのが商売じゃ」
「へ、へぇ……」
龍は(このじーさん……大丈夫かな)と考えてしまったが、逆に考えた。
運命……ならば自分の運命はなんだろうかと気になった。
「じゃあ……さ、俺の運命はどうなってる?」
「ほほ、ワシに任せい。ムムム……」
じーさんは龍をじっと見つめる。すると少しずつ口が開いていくが答えは意外なものだった。
「…………視えん」
「……は?」
「いや、すまん。視えないというより……いや、ちゃんと伝えた方がいいな」
じーさんは見つめるのをやめると重たい口を開けて話すようにゆっくり言い始めた。
「お前さんの未来はこの世界にはない」
「…………は?」
龍は愕然とし、開いた口がふさがらなかった。しかしじーさんはそれを気にせずそのまま話を進めていく。
「お前さんは時空を超え外史の世界へと飛ばされる。その世界を――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
今度は龍がじーさんに制止をかける。それに応じるようにじーさんは黙った。龍は目をつむり、こめかみを押さえて考え込む。
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