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『お客様にご案内いたします。東京発新潟ゆき、間もなく発車となります。ご利用のお客様は…』
感傷に浸る間もなく、新幹線の発車を告げるアナウンスが流れていく。時間は待ってはくれない。またひとつ、きみと一緒にいた時間が遠くにいってしまう。
僕は自由席の窓側の席に座り、リクライニングを後ろに下げ、程なくして眠りに落ちてしまった。
昨夜は一睡もできなかったのだ。
それは、きみのことばかりを考えていたからだ。
きみは僕の心の住人だ。
きみは僕の思考の中心にいた。
きみならどういう行動をするのだろうか。きみならどういう考え方をするのだろうか。
僕は考える。
僕の心を支配しているのは未だにきみだ。未だに頼ってしまう自分がいる。
きみはきっと、僕の心を縛り続けるのだろう。
これからもずっと。
この前、冗談でそろそろ家賃でもとろうかと言ってみたら、きみはひどく怒っていたね。
それでいい。
それでいいのだ。
僕は嬉しいのだ。
きみが僕の一番近くにいて、どんなに些細なことでも会話できることが。
そして、怖くもある。
もし、いつか、きみを超える女性が現れたなら、きみは荷物をまとめて出ていってもらわなければならない。
正直、きみにそんなことを言うのは辛い。できれば、ずっとそばにいてほしい。でも、自信を持って言うことはできない。
恋に落ちるとは、交通事故に遭遇するのと同じように、突然訪れるものなのだから。
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