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でも、最近は不思議と信じる気にはなれなかった。心の中の唯物論主義者が囁く。結局、目に見えるものが総てだ。
神や霊や仏なんて存在はしない。
あるとするのならば、それは人間の造り出した気休めでしかない。
僕は物事を否定的にしか捉えられない自分を呪っていた。
僕は空を見上げていた。視線の先ははこの世に存在するもののどの一点にも焦点は合わなかった。
ただ、虚空を。
強いて言えば、きみの住んでいるであろうもうひとつのセカイを見つめていた。
僕はそのセカイに何度も行きたいと思った。『何のために生きているのか?』という答えが見つからなくて。
でも、実行する勇気はなかった。
そのたびに未だに人間をやらされている気分になって、自己嫌悪に陥った。
きみのいなくなった世界に一人で住むのは酷だった。
だからこそ、きみの執念には頭が下がる。
生きて幸せになることを諦めたきみは、命を捨ててまで僕の心の中で生きようとしたのだから。
実際にきみは僕の心の中に生命を宿した。その決断は僕にはとてもできない。
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