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僕はきみのことを最後の最後まで傷つけてばかりだった。もし望みが叶うなら、もう一度きみに会って謝りたいとも思う。
きみの笑顔が見たい。
きみの声が聞きたい。
きみの温もりを感じたい。
そう願っても、もうきみは僕の隣にはいない。二度と叶うことのない望みなのだ。
だから、僕はきみが最期にくれた日記帳を、肌身離さず今でも大事に持っている。きみと繋がっていられるような気がするから。
未練がましいときみは笑うかもしれない。そう思うなら、心の底から笑えばいいと思う。その方が僕としても心が落ち着くから。
『大切なものを失ってから、その本当の価値がわかるなんて、愚かな人間だね』
と、思ってくれればいい。
日記帳は涙でところどころインクが滲んでいる。今ではそれがきみのものなのか、僕のものなのか、判別が難しくなってしまった。
毎年、桜の季節になると、より鮮明にきみを思い出す。
それは、きみとの思い出が桜と切っては語れないからだ。出会いも別れも桜の季節だった。
でも、最近はだんだんと靄がかかり、クリアには見えなくなった。どんなに桜が咲き誇っていたとしても、モノクロームな風景にしか見えなくなった。
綺麗なはずの桜はぼやけて見えていた。
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