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「こちら、ハンバーグステーキになります。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございました。また、お越し下さいませ」
忙しい真昼時のファミリーレストランの店内。フロアに広がる百席近い座席は、ランチとディナーのラッシュタイムには人が目まぐるしく入れ替わる。さながら戦争のようだ。
「料理提供が遅れているぞ。佐原、キッチンに入ってヘルプ頼む」
店長の声が響く。僕は急いでキッチンに入った。次々と送りこまれるオーダーをひとつひとつ潰していく。目が回りそうな忙しさだ。僕は一心不乱に作業を繰り返していた。フロアがようやく落ち着きを取り戻したのは、午後二時を少し過ぎたころだった。
「お疲れ、佐原。ディナーも頼むぞ」
店長が僕の肩を叩いて労をねぎらう。
「はい、よろしくお願いします」
「ラッシュの時間は、いろいろ厳しいことを言うかもしれないが、それはお客さんが最優先だからな。そのことはわかってくれ」
「はい、わかりました」
三十代そこそこの若い店長だ。きっと、数年前には僕と同じ立場だったのだろう。その時に自分が感じていた不満を、僕が抱かないように、逐一フォローを入れてくれている。
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