明日香

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就職活動は割と順風だった。そう言うと確かに聞こえはいい。 でも、僕は就職戦争という競争から真っ先に逃げだしたに過ぎなかった。 大学の友人たちが皆、一流企業への就職を目指して悪戦苦闘している中で、僕は職種や待遇に一切こだわることはなかった。 それでも、ひとつだけ譲れない条件はあった。それは、新潟以外の勤務地であること。 きみとの思い出が未だに漂う土地では、情緒不安定になってしまって、とても仕事どころではないような気がしたからだ。 もちろん、そんな心の中身を面接官に暴露するわけにもいかない。だから、僕は心に仮面を纏った。 長いスパンで人生を見た時に、いろいろな人が多く混在する都市のほうが、より多くの経験を積むことができ、なおかつ、自分の成長に繋がると考えたのだと、当たり障りのない対応をしたと思う。 ほとんどが口から出まかせで自分でもよく覚えていない。 望みは叶えられた。 僕は会社の本部がある東京に就職が決まった。 内定をもらってから、実際に勤務に就くまでの間、僕は東京を夢の国のように思っていた。 きみの呪縛から解放され、キャリアアップだって十分に狙える。新生活が待ち遠しくて仕方がなかった。
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