1人が本棚に入れています
本棚に追加
きみはいつだって僕の横で、僕の話を真剣に聞いてくれた。
時には相槌を打ち、時には質問を投げかけてくれた。
僕の横で話を聞いてくれるきみは、写真に写っているきみの姿とは違った。僕と同じように年齢を重ねた二十三歳のきみだ。
きみが僕の前からいなくなった十五歳の春から比べて、きみはずいぶんと大人らしくなった。
ショートだった髪は背中の中ほどまで長く伸び、艶やかな曲線を描いている。
化粧だって覚えた。
白い肌に絶妙にマッチした唇のほのかな赤みがひどく魅力的だ。
僕は今のこの生活に非常に満足している。
きみと笑いあいながら、きみの温もりを感じ、きみの『おやすみなさい』の言葉で眠りにつく。
朝は『おはよう』の声で目覚め、『いってらっしゃい』の声で送りだされて会社に向かう。
一体、これ以上何を望むというのだろうか。
幼なじみのアキにそのことを言ったら、きっとばかにされるだろう。僕はそれでも構わないと思っている。
住む世界が違おうとも、僕の存在する意味はきみなしでは考えられないのだから。
「ごめん、今日はもう休むわ」
明日は金曜日。夕方のディナーの時間には多くの来客が見こまれるだろう。体力の回復は最優先事項だ。
「そう、わかった。じゃ、また明日ね。おやすみなさい」
そして、夜はふけていく。
最初のコメントを投稿しよう!