1章 私たちのおんぼろ自転車

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何と面白きことか、小見川家の血筋。 「そうだ、自転車借りてくよ」 玄関先にある、古ぼけた自転車を出しながら言う。 少し動かしただけでミシミシと音を立てるおんぼろ自転車だが、昔はこれを借りて乗っていたので、全身に馴染んでいるのだ。 最も、本土で乗ってた自転車よりはるかに汚いが。 私がサドルに跨がり足で地面を蹴るのと同時に、おばあちゃんの威勢の良い声が背中にぶつかる。 「いってらっしゃい、気を付けるんだよ!」 「わかってるよ!」 ペダルを漕ぎながら、大声で返した。 ばあさまは声がデカイ、でも、そこがまた好き。 自転車を漕ぎ始めてから約5分、約束の場所である港に着いた。 空と遊ぶ時落ち合う場所は、今も昔も変わらずにいつも決まってこの港らへん。 しかも港ではなく、港らへんなのだ。 それでも約束通り落ち合えるのは、なかなか素晴らしいことではないか。 自転車を止めて降り、目の前に広がる海を見据えた。 本土から見る海とここから見る海は、同じ海でも全く別物に感じる。 空気が澄んでいるせいか、見慣れている風景のせいか、あるいは私の気分が昂っているせいか。 全て当てはまるんだな、とひとりで笑っていると、背後から、自転車のブレーキ音が聞こえた。 「陽向!」
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