1章 私たちのおんぼろ自転車

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肩越しに振り返ると、自転車に跨がりながら、こちらに手を振る空の姿があった。 「空!」 私は手を振り返し、自転車から降りる空の方へと駆け寄った。 昨日は農作業服で現れたから分からなかったが、空の私服姿はとても大人びていて綺麗だった。 バスト部分が真っ白なノースリーブワンピースで、 ウエスト切り替えの膝丈スカートはネイビーのギンガムチェック。 おまけにサラサラの黒髪ロングヘアーと来たら、文句なしの清楚なお嬢様だ。 私の想像を遥かに超過した空の可憐さに、思わず自分の服を見る。 物は違うが昨日と同じくキャミソールで、色は涼しげにミントグリーン。 あと真っ白な短パンにサンダルという風物詩スタイルだ。 もう少し服装に気を遣えばよかった気もするが、昨日も同じテイストだったし、そもそも空はそんなことを気にするような人ではない、と、開き直ることにした。 「ごめん、待たせちゃった?」 あれこれ考えた末開き直った私に、空は少し申し訳なさそうな顔で言ってきた。 「ううん、私も今着いたところ」 そんな空に笑顔で返し、空の乗ってきた自転車を一瞥する。 私の自転車と同じく、なかなかのおんぼろ加減だ、5年前に乗っていた物かも知れない。
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