7人が本棚に入れています
本棚に追加
それから15分程経った頃には、私は既に陸地に足を置いていた。
思いっきり背伸びをして、思いっきり島の空気を吸い込んだ。
島のおいしい空気で肺がいっぱいになったところで息を吐き、満面の笑みで周囲を眺め回す。
「ただいま、私の照波島!」
嬉しさのあまり発した第一声に、家族と出迎えてくれた祖父母の視線が、一斉に私へと降り注いだ。
そんなことお構い無しに両腕をいっぱいに広げ、再び深呼吸をする。
「陽向は変わらず、元気だね」
そんな私に呆れる様子もなく、おじいちゃんは笑って言った。
隣のおばあちゃんも笑い、お父さんもそれに釣られて笑い出す。
「陽向は、この島が好きだもんなぁ」
「当然、故郷だもの」
お父さんにそう大声で返すと、お母さんと太陽も声を出して笑った。
何だかんだ言って、みんなこの島が好きなんだ。
本土で生まれ育ったお母さんだって、 照波島の話が出れば必ず加わってくる。
本土で彼女を作って、少しだけ疎遠になった太陽も、今日はいつになく饒舌で上機嫌だ。
本土に越してから口数の減った私たち家族が、和気あいあいとなって一番心地よくいられる、そんな照波島が、私は大好きだ。
「小見川さん!」
そんなことを考えていると突然、遠くから名前を呼ばれた。
私たち一家が声のした方向を見ると、懐かしい顔触れの夫婦が、こちらに向かって歩いて来ていた。
「深見さん!どうも、お久しぶりです」
お父さんが言う。
眉毛は太く堀が深くて、パッと見厳つい顔をしたおじさん、深見健蔵さんは、島に住んでいた時からの知り合いで、家は離れているけど、お父さんにとっては一番仲良しの人だ。
最初のコメントを投稿しよう!