序章 グラッとする

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「こんな格好でごめんね。今日来るって聞いてたから、抜け出して来ちゃった」 まさしく思っていた通りの言葉を空は言い、大きな瞳で真っ直ぐ私を見つめてきた。 「本当に久しぶり、陽向」 私が、どうしても会いたかった人。 生まれたときから14年間ずっと一緒で、5年前お互い涙を流して別れを告げた、大好きな親友。 「空、会いたかった!」 空に会えた、その実感が湧き出すのに時間がかかったが、一度溢れたらもう止まらない。 私は目に涙を滲ませて、最早突進の勢いで空に抱きついた。 泥だらけなんて気にならない。むしろ一緒に泥だらけになりたかった。 「わぁ!もう、陽向ったら」 軽く悲鳴を上げた空だったが、空も私を抱きしめ返す。 百合の花でも咲きそうな私達だったけど、それほど嬉しかった。 島に帰ってきた理由は、空に会うためだと言っても過言ではない程に。 一頻り抱きしめ合った私達は、少し照れた表情を浮かべつつ、お互いを見た。 「空、変わってないね。もっと美人さんにはなったけど、やっぱり変わってない」 私がそういうと、クスッと空が笑う。 「美人なんて、よしてよ。陽向も、大人びてるけど変わってない」 空のような人を美人と言わずなんと言おうか。思わず声に出しそうになり、言葉を飲む。 それに私は、これっぽっちも大人びていないと、個人の見解ではそう思った。 5年前と変わっていないキャミソールに短パンとサンダルという、この夏の風物詩みたいなスタイルは全く成長しちゃいない。 せいぜい変わったと言えば、短かった髪が長くなり、チリチリ度を増したということくらいか。 「なんか、安心しちゃった」 不意にポツリと、空が言葉を溢す。 不思議に思って顔を覗きこむと、空は私を見て、少し笑った。 「あのね、都会に行ったら、陽向が別人みたいに変わっちゃうんじゃないかって、不安だったんだ」
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