序章 グラッとする

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小さな声で言い、視線を落とす。 「陽向はそんな人じゃないって、わかってるんだけどね。心のどこかで、そう思っちゃってたんだ」 少し肩を竦めて空は言い、大きな瞳をこちらに向けた。 「ごめんね」 空の申し訳なさそうな顔を見ていると、何故だか涙がじわりと滲み出た。 理由は私自身でもわからないけど、視界が涙で滲んでいく。 「謝らないで、空。私も、空がこうやって暖かく出迎えてくれて、安心したんだから」 涙声でそう言うと、空も瞳に涙を滲ませて、くしゃりと笑った。 手を取り合って泣き笑いする私達を見て、両親や祖父母達が笑い声を上げるのが聞こえた。 勝手に笑うがいいさ。 私と空の間にある世界は、そんなもので破れはしない。 本当に来たかった故郷と、本当に会いたかった親友。 そのどちらも叶えられた今の私は、幸せ以外の何物でもない。 そう心の底から思えることこそ、一番の幸せなんだろうな。
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