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僕の目はある一点に吸い込まれて行くようだった。
――かわいい。
それでいてきれいだ。
セミロングで艶やかな黒髪が印象的だった。
校章がついたブレザーを着ている。
おそらく、高校生だろう。
今時の高校生である僕が言うのもなんだが、今時の高校生とは思えない凛とした雰囲気があったように思えた。
僕の乗る電車が彼女の電車と並走していたのはおよそ15秒。
運命的な出会いに思えて、なんだかとてつもなく長く感じたけれど、彼女を視界に捉えたのはほんの少しの時間だけ。
顔もよく見えなかった。
それなのに、僕の心は今までに味わったことのないほど高揚している。
2枚の扉越しに感じられたのは彼女の雰囲気だけだというのに、今にも心臓が飛び出してしまいそうなほどに熱く脈打っている。
ーーいつもあの電車に乗っているのなら僕はまた“あの子”にあえるのだろうかーー
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