1人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
1.夜を纏う
「魔王様って、なんだか『夜』を纏ってるようだよね。」
文芸部の部室でいきなり稜子が言い放った。
珍しくいない空目を待ちながら、いつものメンバーは各々好きな場所に座り、読書をしていた。
その静かな雰囲気をぶち破った先ほどの稜子の言葉。「あんた、何が言いたいの?」
呆れた口調で亜紀が言った。俊也もどこか苦笑している。
だが、武巳の反応だけは違った。
「俺もそうおもう‼」
そう言って二人は話しだした。
そんな二人に呆れながら、俊哉はさっさと読書に戻る。
亜紀もまた本に集中しようとした。
だが、次の稜子の言葉で出来なくなってしまった。
「魔王様って、『夜』みたいだよね。なんか、静かな『夜』みたい。」
武巳が大きく頷く。
「そうそう。物静かでクールだもんな。」
(違う………)
亜紀はそう心の中で呟いた。
空目は、確かに物静かではあるしクールでもある。
だが、亜紀は『夜』とは結びつけることができなかった。
(『夜』は、優しくはない。)
そう思ったが、亜紀の記憶が正しければ空目が優しかった時は、亜紀と二人きりの時が多かった気がする。例外として、あやめが側にいる時もあったが。
最初のコメントを投稿しよう!