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3.昼寝日和
「おや、珍しい。」
「どうしたんだい、魔女。」
散歩をしていた魔女こと詠子の呟きにそばにいた神野が尋ねた。
「見て、あそこ。」
彼女が楽しそうに指さした先には木陰があった。
「なるほど。」
そこに見えた人影を見て目を細めた。
「『影』の人も寝顔は可愛いいんだね。」
近寄り、木に持たれかかって眠っている空目に目線を合わせてしゃがむ。
いつもの大人びた表情を引っ込め、あどけない寝顔を空目は見せていた。
いつも長い黒髪で半分以上隠れている顔も、結ばれているせいで全部見えている。
「これをしたのは『鏡』さんかな?それとも………」にっこりと笑うと視線を空目から外し新たにこの場に来た者に向ける。
「君かな?『ガラスの獣』さん。」
「貴方には関係ないと思うけど?」
どこかトゲトゲしい言葉に、楽しそうに笑った詠子は立ち上がった。
「じゃぁ、邪魔者は消えるよ。後は仲良くね。」
戸惑う亜紀をそのままに、詠子は歩きだした。
その背中が見えなくなってから、亜紀は空目に近付いた。
「にしても、よく寝てるね……………」
半ば呆れた言葉を投げ掛けるが空目は起きる様子はない。
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