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1.キズ
「痛っ!」
亜紀は顔をしかめて指先を見た。
細い切傷から少しだけ血がにじみ出てくる。
「亜紀ちゃん、大丈夫!?」
稜子がまるで悲鳴をあげるかのように叫ぶのを聞いて亜紀はそっとため息をつく。
「紙で切っただけだから、そんな大げさなものじゃないよ。」
そう言って手をふる。
「一応、消毒したほうが良いんじゃ?」
なぜか慌てている武巳が言うことに、亜紀はまた顔をしかめた。
「だから、大げさなんだよ。これくらい、舐めておけば平気だよ。」
そう言って、少し痛む手を何気なく上げた時、誰かにひっぱられ、温かい何かに包まれた。
「………//////!!」
亜紀は顔を赤くすると、自分の手首を掴んでいる手を振り払った。
「な、な、な、何してるの、恭の字!!/////」
そう、空目は皆の見ている前で亜紀のキズを舐めたのだ。
「お前が『舐めておけば平気だよ。』と言っただろ。」
そう平然と言う空目にますます顔を赤くした亜紀は部室を飛び出した。
「なんなんだ?」
不思議そうに呟く空目に、傍観者となっていた他の四人は、顔を見合わせて苦笑した。
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