1人が本棚に入れています
本棚に追加
2.君だけでいい
「美希さんて、なんで前髪いつも下ろしてるんですか?」
隣を歩いている、年上の彼女―美希の顔を覗き込むよいに柾は聞いた。
美希は足を止めて、柾を見上げて首を傾げた。
「えっと………」
少し困った風に呟くと頭を抱える。
美希は何も言わずに、答えを待つ。
「もったいないな~。って、思ったんです。」
そう言って、瞳を隠している前髪を上げる。
中から出てきたのは、銀色の瞳だった。
「せっかく、綺麗な瞳なのに………」
柾は美希のこの瞳が好きだった。
いつも見ていたいのに、美希はよく前髪で隠しているので、見れないことのほうが多い。
まわりの人の中には、「気持ち悪い。」と言う人もいるが、柾はキラキラ輝いているように見える瞳が大好きだった。
だから、何度目かになるお願い。
いつもならなんでも聞いてくれる彼女だが、この願いは聞いてもらえず、今日もまた、首を横に振られた。
「なんで~?」
我ながら、ガキみたいだ。と内心苦笑しながらすねた風に言うと、美希微笑んで柾にささやいた。
耳元でつむがれた言葉に、目をぱちくりさせていた柾だが、次の瞬間には笑顔になっていた。
「こんな理由じゃ、ダメ?」
最初のコメントを投稿しよう!