プロローグ

3/5
前へ
/162ページ
次へ
モンスターはどうやら土地の力の存在を認知しているらしく、ボスモンスターが倒されようと混乱することはない。 ただじっと復活を待ち続けるのだ。 つまり、危険なボスモンスターを討伐することは、しばらくの間その傘下にいる一般モンスターの動きを抑制することにもなる。 「ーーたとえ応急措置に過ぎなくても、それには明確な意味がある。 諸君の所属する十字旅団の理念は、定期的なボスモンスター討伐による平和維持だ。 まずはそれを知っておいて貰いたい。 今日のところはこれで以上だ。 次回は、ボスモンスターに関する基礎知識を教える。」 そう言い残して教壇を降りながら、育斗は何故そんなことを机上で学ぶ必要があるのかが疑問でならなかった。 育斗が教えている生徒たちは、十字旅団の戦闘員候補だ。 いずれ、育斗が戦闘技術も教えることになる。 ならば、はじめから実戦で訓練した方が効率的なのではないか、と現役の戦闘員でもある育斗には不思議でならない。 この世界には、世界中を旅して歩く冒険家なる人種が存在する。 その目的は、純粋に旅を楽しむ他、困っている人々を助けて回ったり、各地に散らばる友人との交流を楽しんだりと人によって様々であるが、『モンスターを倒して自らの力量(レベル)を高める』という共通の目的がある。 世界を渡り歩くには、モンスターによって危険地帯と化した土地を突っ切らねばならないことも多々ある。 当然、そうした危険地帯を無事に通り抜けるには、モンスターと渡り合えるだけの力量が必要となってくるのだ。 育斗もかつては、そんな冒険家の1人だった。 当初の旅の目的は忘れてしまったが、モンスターとの戦闘を繰り返すうちに力量はぐんぐん上がっていった。 やがて『強くなること』が第一目標となり、モンスターとの戦いを繰り返す日々を過ごした。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加