3人が本棚に入れています
本棚に追加
勇者は戸惑っていた。この感情がなぜ好きな人(男)といるときと同じ感情なのか理由がわからないからだ。
「おい勇者!」
「なんだよ」
勇者は今うかつにもドキッとしてしまった。
「今回の戦いはここまでにしよう」
「な、なぜだ!勝負はまだ終わってないぞ!」
勇者はあくまでも勇者。魔王を倒す勇者だ。
こんな感情に左右されてはいけないとわかっているのは、勇者もわかっている。
「フン!なにか用事でもできたのか?」
「いや、腹が減ったので、、、」
「それだけかーい!!もっと重要なことかと思った俺がバカだったー!!」
「ふふ、お前もアホだな」
「お前に言われたくないわー!!腹減ったから休戦しようって言う魔王なんて初めて見たわー!!」
「誰が腹が減ったと言ったのだ?私はお前と本気で戦いたいから、力を溜めさせてくれと言ったのだが?」
「なに言ってない雰囲気醸し出してるんだー!!いまさら遅いわー!!」
「、、、やはり待ってくれないのか」
「当たり前じゃー!俺は勇者!お前は魔王!俺はお前を倒す!」
「、、、おなかすいた」
「うぐ、、、」
魔王は目に涙を浮かべ、勇者を見つめてくる。
「ぬぐぐ」
「、、、」
「だー!!わかったわかった。休戦すりゃいいんだろ!」
「うむ。感謝する」
その魔王の目には涙など消えていた。
「なんてやつだ、、、」
「ではお前も今日はもう帰れ。、、、また明日挑みに来てもいいがな」
「へっ!当たり前だっつーの!覚悟してろよ!」
「ふん」
魔王はそのまま勇者に背を向け、自分で出した闇の中に入ろうと歩きだした。
(どうする、勇者フミヤ。今の魔王は丸腰で俺に背を向けている。もしかして、今がチャンス!?)
「ひっひっひ」
勇者は剣を構え、魔王の背中に剣をぶすーっと、、、
、、、刺さなかった。というよりも、刺せなかった。
最初のコメントを投稿しよう!