ラブ素通りぃ

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「私、上南(かみな)先輩の事が好きな自分が好きです」  後輩の下北(しもきた)に校舎裏まで呼び出され僕が聞かされた一言だ。  裏山に身を隠し始めている太陽は、遠巻きにそれを眺める、色恋沙汰好きの野次馬にも見えた。       ◆◆◆  今日は一学期の終業式。いつもより数時間早い放課のチャイムが鳴ると、下北は僕のいる教室に挨拶もなしに駆け込み、そして、一枚の便箋を挑戦状よろしく僕の机に叩きつけていった。  教室内の「点」や「・」の視線が一斉に彼女に注がれた中、下北は何かを成し遂げたような、戦争の終焉を見届けた傭兵のような顔をして大股で退場。  便箋には「今日の6時、校舎裏にて」とだけ書かれていた。 ……血文字で。        ◆◆◆ 「そうか。それは良かったよ。上南冥利につきるよ」
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