ラブ素通りぃ

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「だから私、もっと私を好きになりたいんです。上南先輩の事が好きで感情を表現した末に上南先輩と付き合う事を成し遂げた私を好きになりたいんです。だから……」 「ごめんなさい」 「まだ何も言ってないじゃないですか」 「何も言わなくても、僕が得する話じゃないのは理解した」 「私は損しません」 「知らないよ」  どう考えても異常な話だ。彼女は自分自身への愛の投資として僕を小切手に使おうとしている。  自惚れや、個人的な優越感から来る愛の告白のような不快感は感じないが――むしろ、どこか可笑しさを感じるくらいの話だが――、それでも、ここで「いいよ」と二つ返事してしまうと、何か良からぬ事が起きる。  本能がそう察知していた。  カラスの鳴き声が聞こえる。彼女の、カラスの濡れ羽色した真っ黒で大きいポニーテールが風になびいて小さく揺れた。頭に一匹カラスが乗っているのかと思った。
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